1995年、ボスニア紛争停戦直後が舞台の『ロープ』
「国境なき水と衛生管理団」として活動する5人は、村の井戸に投げ込まれた巨漢の死体を発見する。
だが死体をつり上げるためのロープがない。そこで5人は手分けして、現地でロープを探す旅が始まっていく。
映画の原題は「A PERFECT DAY」だ。
ボスニア紛争は、第二次世界大戦後の最も悲惨な3年間といわれるひどい争いだ。
だが、作品内では紛争の悲惨なシーンが全くない。その結果、苦しい状況にも関わらずどこかほんわかとした雰囲気がずっと充満している。
『ロープ』はカンヌ映画祭での上映後、5分間にも及ぶスタンディングオベーションを得た作品だ。
そんな高評価を得た『ロープ』のあらすじを早速、見ていこう。
『ロープ』のあらすじ
「国境なき水と衛生管理団」の5人は二台の車に分かれて移動して活動を行う。井戸に人の死体があるとメンバーは気づくが、引き上げるのに使う『ロープ』がない。またなぜか現地の人は、すぐにロープを貸してはくれない。
援助隊はロープを求めて、旅に出ることにした。
道路の真ん中に牛の死骸が転がっていたり、人質を拘束するために道が行き止まりになっていたり、と様々な混乱が道中にあった。牛の死骸がある理由は、地面のどこかに地雷が埋まっているからだ。
無闇に車は道を進む訳にもいかず、立ち往生する。野宿だ。
ある日、祖父と二人で暮らす少年・ニコラと出会う。
サッカーボールを仲間に取られている所を助ける形で、援助隊と行動を供にすることになった。
ニコラは意気揚々と「ロープのある場所を知っている」と告げてくる。怪しむメンバー。
戦場に苦しむ住人達に、悪戦苦闘しながらも活動する国際援助家たち。結局、ロープは見つかるのか。
また井戸から死体を引き上げ、住民の飲み水は確保できるのか。
結末は、その目で確かめてほしい。
監督はスペイン人の新鋭フェルナンド・レオン・デ・アラノアで、『ロープ』は全世界に向けた初の作品だった。
『ロープ』のキャスト紹介
『ロープ』のキャストを紹介していこう。名優が作品を盛り立てている。
マンブルゥ(ベニチオ・デル・トロ)
ベニチオ・デル・トロは1967年2月19日生まれ。
ベニチオが9歳の時に母が死亡している。一家全員が弁護士だった影響で本人も弁護士を目指し、サンディエゴの大学に進学する。大学内での演劇クラスが転機となり、俳優の道へ。
「007/消されたライセンス」で端役として映画出演を果たすが、下積み生活が続く。「ユージュアル・サスペクツ」ではフェンスター役を勤めた。出番こそ少なかったもが、96年のインディペンデント・スピリット・アワードの助演賞を受賞している。00年、「トラフィック」でアカデミー賞助演男優賞を獲得し、ブレイク。
以降は、映画出演が増加した。
『ロープ』では、スペイン人のマンブルゥを演じた。無言の状態でも、表情のみで演技ができる名優だ。
ビー(ティム・ロビンス)
ティム・ロビンスは1958年10月16日に誕生。
父は俳優でフォークシンガーのギル・ロビンス。弟は監督作品で音楽を担当しているデヴィッド・ロビンスだ。
88年、「さよならゲーム」で注目されると92年の「ザ・プレイヤー」でカンヌとゴールデン・グローブ賞に輝く。92年、「ボブ★ロバーツ/陰謀が生んだ英雄」では監督業にも着手。多彩な才能を開花させる。
そして名作「ショーシャンクの空に」に出演を果たした。
以降、ティムが監督に名を連ねた「デッドマン・ウォーキング」がアカデミー監督賞にノミネートされたり、「ミスティック・リバー」ではアカデミー助演男優賞を受賞したりと監督・俳優ともに高い評価を得続けている。
完璧な邦題と評判に
原題は「A PERFECT DAY」であったが、日本での公開に伴いタイトルが「ロープ/戦場の生命線」と変更された。このネーミングが、ストーリーとマッチしていて口コミの評判が高い。
ロープの在処を求めて奮闘する5人を見れば、戦場の特殊な事情とタイトルの絶妙さがより分かることだろう。
口コミから見る『ロープ』の評判
”ロープ/戦場の生命線”シネマクレール。停戦直後、1995年のバルカン半島を舞台に、庶民の暮らしを守るために、ロープを探すNGOの人々の物語。名ばかりの停戦の元、命の危機と向き合い、務めを果たそうとする彼等の思いに、頭が下がる。彼等に降りかかる、身近な火の粉が、作品を面白くしてる。 pic.twitter.com/ALgdkqinf7
— 常山の住職 (@CinemaCLAIRfan) March 25, 2018
人生観を問う深い内容が、『ロープ』の見所だ。NGOという複雑な立場の大変さも作品内で描かれている。
「ロープ/戦場の生命線」観た。鑑賞後、思わず恵み深き神に感謝を捧げてしまった一本。こういう「戦争の周辺もの」っていいよなー。 pic.twitter.com/uZXYBLaurd
— ivnin (@ivnin) February 12, 2018
戦争に関係する作品ではあるが、『ロープ』に悲壮感はない。本作の何よりの魅力だ。
『ロープ』の音楽に関して
原題のタイトルである「A perfect day」は、ルー・リードの曲のタイトルと同じである。『ロープ』のラストシーンではピーターポール&マリーの「Where have all the flowers gone」が流れていた。原曲のままではなく、マレーネ・デートリッヒのカヴァー版が採用されている。
映像や雰囲気に合った選曲を、ぜひ楽しんでほしい。
『ロープ』のまとめ
『ロープ』は人を助ける上で、必要なものである。
作品内でもロープは至る所にあるのだが、皆が特殊な事情からロープを手放そうとはしない。ボランティアという立場上、無闇に部隊は現地の内情に踏み入ることもできない。
そんな中、少年がボランティアの輪に入り『ロープ』の存在を伝え、物語が動き出していく。
あくまで『ロープ』にこだわった本作をぜひ楽しんでほしい。